CROWDED

大勢のマネキンの間を練り歩くブティック

例えば渋谷駅前の交差点辺り。行き交う人々、立ち止まる人、ガードレールに腰をかける人、全く無関係な人たちが、集合体として認識され、その街の独特な賑わい、雰囲気を表出していることに気づく。注意したいのは、決して交差点やその周囲の建物ではなく、看板でもない。そこに偶然居合わす人々が、街のアイデンティティを決定する最も重要な要素になっているという点である。
 
ブティックについても、同様なことが指摘できると考えている。すなわち、所謂インテリアや、ディスプレー、サインなどの2次的要素のデザインによるのではなく、もっと直接的に、ショップの服を着た人々(マネキン)が集まることのみで、ブティックのアイデンティティを獲得できるはずなのである。
 
マネキンのポーズや配列は、与えられたテナント空間の特性や、ショップのコンセプトにあわせて、自由に決定できる。例えば、具体的なシーンを設定し、活き活きとした人を配列する、あるいは機械的に、直立不動の人を規則的に並列させるなど、その配列方法により、ショップの雰囲気は全く異なるものになる。従って、ここで示される配列は、その一例にすぎない。
 
動かない人々の間を、街と同じように、自らが求める服装とその組み合わせ例を探しながら、同時に彼らの集まりに影響を受けながら、巡る。棚に重ねて置かれるのではない、ハンガーに掛けられるわけでもない、純粋に、人々が服を着た状態のみを現すブティックのインテリアである。
 
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